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ここのところやたらと昔住んでいた街を思い出す。特に何があった訳でもない、ただ一人で3年半住んだ。私の、唯一の、一人暮らしだった。
7年前。西武新宿線と山手線に揺られて出勤した。西武新宿線はよく遅延を繰り返し私はよく遅刻していた。家をギリギリに出なければ良いだけの話なのにそれが出来なかった(それはいまも)。高田馬場で乗り換えて、新宿を過ぎるとほぼ必ず座れるポイントがあって毎朝定位置につけていた。帰りは、高田馬場の乗り換えホームにあるスタバに寄り道するのが、帰路の唯一の楽しみだった。
こうやってひとつずつ思い出してみるとこの街の思い出はその後の数年間より圧倒的に大きい気がしてくる。急行の止まる駅から夜中に歩いて帰る途中の月がとても綺麗だったこととか、良く行く漫画喫茶のお兄さん、ピーコックは高いので100円ローソンに良く行ったこと、リスのマークが可愛くて味も美味しいお菓子屋さん、近所の人懐っこい猫。東京に遊びに来た大学時代の先輩を部屋に連れ込んだこと。同期の男の子がよく泊まっていったこと。銀色の灰皿。7畳1Kの小さな部屋の1口コンロの狭いキッチンの床。

毎日辛かったという思い出ばかりなのにこうやって懐かしむのは年を重ねた証拠。もうあの頃のようにはなりたくないでしょう?嘘、私はあの空間と時間を愛していた。ひたすらに自分と向き合うシンプルな生活はきっと自分に合っていた。その分、自分を追い詰めるから、辛い思い出ばかりなんだけど。今一人暮らしをしたら、ああなるのかな。以前より意欲も志も低い分、あの頃よりも辛い毎日になりそう。いやむしろ、気負わない分楽に生きることができるのだろうか。
あれこれ考えても何も生まないし一人暮らしに本気で戻るつもりもない。私は今の生活を壊さないように前を向いていかなくてはならない。ああ、いつも同じことの繰り返しだ。何度も何度も言い聞かせている。過去ではなく前をと。言い聞かせないと引き戻されそうになるものすごい引力。ブラックホール。助けてと手を伸ばしても掴みたい手が無い。きっと本当は、私はだれも信じないし誰のことも好きじゃない。